クリックで分類群を選択

2022年3月29日火曜日

ヤスデの体長測定

 ヤスデは丸まるので体長の測定が難しい。かと言ってすべての個体をまっすぐに整形して標本にするには労力がかかる。伸び縮みもあり正確な測定は難しいので、ある程度で妥協する必要がある。いろいろ試した結果、以下の方法に落ち着いた。


1:ババヤスデ科など大型の種類は丸まっていると容器から出せなくなるので、ティッシュで包んで真っすぐにする。小型の種類は妥協する。真っすぐにする場合、タッパーにエタノールを浅く引き、しばらく密閉して死ぬのを待つ。死んだら直ちにティッシュに包み、エタノールにつけ標本にする。このとき死んでから時間が経つと外骨格が脆くなるのでスピーディーに行う。生きているときにそのままエタノールにつけると丸まろうとし、まっすぐにならない。

2:全体とスケールを同倍率でそれぞれ撮影する。大型個体はスマホで、小型個体はスマホを実態顕微鏡につけて撮影する。撮影した画像は自分用のLINEグループでmyPCに送る。


3:フリーソフト「測ルンです」を使って体長を測定する。丸まっている個体も測定できるが、精度はいまいちかもしれない(ソフトの問題ではなく方法論として)。「ImageJ」でも測定可能ではあるが、効率が悪い。


3について、もう少し詳しく。「測ルンです」の機能は非常に簡単。まず、Hakarun.exeをスタートメニューより起動する。右クリックし、確定をクリックすると上の画像のような画面が現れるはず。「尺度補正」で撮影した定規やマイクロルーラーをもとに尺度を設定する。一度「測定終了」し、測定したい画像を表示したら再度Hakarun.exeを起動し、何度かクリックして赤い線を作ったら、最後に確定することで赤い線の長さが測定される。測定結果は最上段右上に表示される(この画像では5.1 kmとなっているが、実際には5.1 mmである。便宜単位を置き換えればよい)。

*測定時に画面がやや拡大されることに悩まされていた。開発者のなっちゃんさまに問い合わせたところ、よくある質問と回答のスクリーンカッターに関する質問の14番、「枠内コピーすると指定した範囲より狭くなってキャプチャーされている」に該当するとのことであった。プロパティ>互換性>高DPI設定の変更>「高DPIスケール設定の上書き」の「高いDPIスケールの動作を上書きします」にチェックを入れることで解決した。

*しばしば画面がほぼ真っ暗になってしまい測定できない現象が起きていた。これについても対策をなっちゃんさまに教えていただいた。設定を開き、「画面取得方式を変える(測定時のデスクトップ画面が正常に表示されない場合)」にチェックを入れることで解決した。

2022年1月22日土曜日

「東亜産多足類文献目録」掲載文献一覧

東亜産多足類文献目録は現在2003年の第56集まで発行されていますが、その後長らく更新されていません。特に初期は各文献へのコメントがあり、その中には重要なものも少なくありません。東亜産多足類文献目録の掲載雑誌と出版年は「 ヤスデ類の文献集め」を参考にしてください。

文献収集のため、東亜産多足類文献目録に掲載されている文献を全て書き出しました。急いで書いたために体裁は整えていませんし、誤植も多いと思いますが参考になれば幸いです。入手済みの文献はこちらをご覧ください。東亜産多足類文献目録の収集には筑波大学の八畑謙介先生と豊田ホタルの里ミュージアムの川野敬介さまにお世話になりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。


2021年11月25日木曜日

ヤケヤスデ Oxidus gracilis (C. L. Koch, 1847)

   My図鑑節足動物門 Phylum Arthropoda多足亜門 Subphylum Myriapoda

2021年06月15日 熊本県熊本市

世界中に分布する種類です。近縁種の分布から東アジア周辺が原産だろうと考えられています。


2021年9月28日火曜日

多足類の文献一覧 Bibliography of myriapods in Japan and neighboring countries

日本および周辺国の多足類の文献を収集しています。現在入手済みの文献リストを作成しました。一部、日本とは関係がないものの重要な文献、海外の多足類に関する日本人が著者の文献、その他、私が興味を持った文献等も含んでいます。現在は東亜産多足類文献目録掲載の文献を主に収集しています。収集の方法は「 ヤスデ類の文献集め」をご覧ください。

未だ網羅にはほど遠く、文献の存在を把握しているものの、登録・整理が追い付いていないものも多数あります。必要な文献がある方、リストの向上に協力していただける方、誤植の指摘、新しい出版はぜひ"kwhr911 -at- gmail.com"までお伝えください。雑誌ごとに整理したい場合や、並び順を変更したい方は、Excel版をお送りするのでご連絡ください。まだまだ修正や文献の追加が多いため、変更履歴は記録していません。閲覧したい文献がある場合、気軽にご相談ください。


収集・整理にあたり、たくさんの方から助けていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

謝辞(敬称略、アルファベット順)
千頭 康彦、千代田 創真、林 大智、開澤 菜月、宇野 良祐、上西 太朗、川野 敬介、益田 和昌、小野 展嗣、Paul E. Marek、仲間 信道、新島 渓子、田邊 力、田之岡 綾花、辻 雄介、塚本 将、脇 悠太、八畑 謙介、山内 健生、Yurii V. Dyachkov、‪Zoltán Korsós


We are gathering literature on myriapods from Japan and neighboring countries. Below is a list of the literature we currently have. Additionally, we include other significant works that may not be directly related to Japan, such as those on myriapods from other regions authored by Japanese researchers, as well as works we find interesting. At present, our focus is primarily on collecting literature listed in the "Bibliography of the Myriapoda of the east Asia". For more information on how we gather literature, please refer to "Collecting the Literature on Millipedes (in Japanese)".

This list is by no means exhaustive, and although we are aware of additional literature, many references have yet to be registered and organized. If there's a reference you're looking for, if you’d like to help us improve the list, point out any typos, or notify us of a new publication, please contact us at "kwhr911 -at- gmail.com." If you would prefer the list organized by journal or in a different format, feel free to reach out, and we can send you an Excel version. Since we are continuously revising and adding references, we do not keep a record of all changes. If you have any specific literature requests, please don’t hesitate to get in touch.

Text enclosed in [] is our translation. If you are an English speaker and find a translation you think is incorrect, please let me know.

We sincerely thank everyone who has contributed to collecting and organizing the literature. We are truly grateful for their support.

Acknowledgements
Yasuhiko Chikami, Soma Chiyoda, Daichi Hayashi, Natsuki Hirakizawa, Ryosuke Uno, Taro Jonishi, Keisuke Kawano, Kazumasa Masuda, Hirotsugu Ono, Paul E. Marek, Nobuyuki Nakama, Keiko Niijima, Tsutomu Tanabe, Ayaka Tanooka, Yusuke Tsuji, Sho Tsukamoto, Yuta Waki, Kensuke Yahata, Takeo Yamauchi, Yurii V. Dyachkov, Zoltán Korsós




Last update: 2024.XI.01
桒原 良輔(Ryosuke Kuwahara)

2021年1月23日土曜日

アマビコヤスデ Riukiaria semicircularis semicircularis (Takakuwa, 1941)

  My図鑑節足動物門 Phylum Arthropoda多足亜門 Subphylum Myriapoda

♂ 2020年09月20日 石川県小松市

 九州や四国の個体群は側庇が黄色くなります。側庇が黄色いよく似た別種もいるため、注意が必要です。全身灰緑色の個体は別属のミドリババヤスデ Parafontaria tonominea や ヘラババヤスデ P. falcifera に似ていますが、本種は背板の皺や隆起が目立ちます。

2020年8月26日水曜日

ミヤマタテウネホラヤスデ Antrokoreana takakuwai sylvestris Shinohara, 1960

   My図鑑節足動物門 Phylum Arthropoda多足亜門 Subphylum Myriapoda/

2019年11月26日 東京都八王子市

 富士山西部の溶岩洞窟から知られている名義タイプ亜種のカザアナヤスデ A. takakuwai takakuwai とは後生殖肢の先端に葉状片が無い点が異なります。冬の湿潤な林床で見られます。

2021年01月23日追記:カザアナヤスデ A. t. takakuwai を見てきました。本亜種とは外見上の差異は見つかりませんでした。

アカヒラタヤスデ Symphyopleurium hirsutum (Verhoeff, 1935)

  My図鑑節足動物門 Phylum Arthropoda多足亜門 Subphylum Myriapoda/


2019年06月22日 東京都八王子市


 倒木の裏に密集していることが多く、ふつう多数の個体が一度にみつかります。

ヒラタヤスデ Brachycybe nodulosa (Verhoeff, 1935)


2019年10月06日 東京都八王子市

 雄が卵を抱卵します。模式産地は福岡県の英彦山。

タマモヒラタヤスデ Symphyopleurium okazakii (Takakuwa, 1942)

 My図鑑節足動物門 Phylum Arthropoda多足亜門 Subphylum Myriapoda/

2019年11月01日 栃木県那須塩原市

 栃木県那須郡那須町が模式産地だと思われます。肌色~薄桃色の細長いヤスデです。倒木の下で見かけることが多く、雨上がりには移動することもあるようです。大抵の場合、一か所から数匹見つかりますが、アカヒラタヤスデのように多数の個体が密集することはありません。

2020年8月25日火曜日

シノハラフサヤスデ Polyxenus shinoharai Ishii, 1983

 My図鑑節足動物門 Phylum Arthropoda多足亜門 Subphylum Myriapoda/


2020年03月31日 千葉県

体長 2 mm. 世界最小級のヤスデです。
環境省レッドリスト: 絶滅危惧I類(CR+EN)
千葉県レッドリスト: A 最重要保護生物

 海岸林近くの極めて限られた特殊な環境にのみ生息しています。生息地は局地的ですが、生息地での個体数は少なくありませんでした。

2019年9月19日木曜日

ヤスデの生殖肢の観察と同定 2/3 (例:クロヒメヤスデ)

 前回、ヤスデの生殖肢の取り外しについて話しました。今回はその続きになります。


前回の話をまとめると、
・特徴的な種を除き、基本的には成体の雄しか同定できない。
・多くのヤスデの成体の雄には第7胴節付近に生殖のために特殊化した付属肢、生殖肢がある。
・生殖肢の取り外しには70~80 % エタノールの液浸標本を用いる。
・胴節は壊しても良いので、生殖肢が壊れないことを優先する。

さて、前回のヤスデは第7胴節に2対ある付属肢のうち前方の1対のみが生殖肢となっていました。他にも第7胴節の2対が生殖肢になっているものや、第7胴節の後方の1対と第8胴節の前方の1対が生殖肢になっているものなどがいます。今回は第7胴節の2対が生殖肢になっている例を紹介します。


 今回生殖肢を取り外すのはこのヤスデです。クロヒメヤスデ Karteroiulus niger です。青森県で採集してきましたが、国内では本州、四国、九州の各地から幅広くみつかっている種類です。



 液浸にして持って帰ってきました。第7胴節に脚の無いスペースがあることから雄であることがわかります。赤く塗りつぶしてある箇所が生殖肢です。



 本当は第7胴節のみ取り外したかったのですが、他の胴節も外れてしまいました。生殖肢の取り外しに支障はありません。



 第7胴節です。左が頭部側、右が尾部側です。生殖肢を抱え込むように胴節があります。生殖肢を頭部側、あるいは尾部側から押すと上手く外れます。



 前生殖肢と後生殖肢がくっついている状態なので慎重にはがします。前生殖肢の尾部側(つまり、後生殖肢と接している側)に鞭状毛がある場合はこれが外れないように気をつけます。クロヒメヤスデには鞭状毛は無いので簡単です。



 上手く取り外すことが出来ました。左が後生殖肢、右が前生殖肢です。



関連リンク





2019年9月6日金曜日

ヤスデの生殖肢の観察と同定 1/3 (例:アカヤスデ)


 今回同定するのはこの種類です。筆者が奥多摩で採集してきました。採集したヤスデは70~80 %のエタノールにつけておきます。死後しばらく経ってから浸けると脆くなってしまうため、なるべく生きているときに標本にします。エタノールは薬局で購入することができますが、最初から薄めてあるものはイソプロパノールが含まれていることがあるので、99 %エタノールを買ってきて希釈します。



他に必要なもの

  • シャーレ
  • 実体顕微鏡
  • ピンセット
  • ハンドライト(必ずしも必要ではないのですが、光を当てる方向を変えると見やすさが変わります。)




 画像はエタノールにつけてある状態です。同定をする前に、まずは体のつくりを見てみます。

 頭に最も近い胴節(画像の1)に歩肢(ほし)は無く、その後3節には1対、4節目以降は2対の歩肢がついています。ただし、この個体は雄なので第7胴節の前方の1対は生殖のために特殊化した”生殖肢”となっています。雌には生殖肢の代わりに普通の歩肢があり、他の胴節と大きな差はありません。ほとんどのヤスデ(フサヤスデの仲間とタマヤスデの仲間を除く)の雄は第7胴節周辺に生殖肢を持ちます。

 ヤスデは成長に伴い胴節の数が増えます。生涯増え続けるものもいれば、途中で止まるものもいます。オビヤスデ目(この個体もオビヤスデ目)は20(稀に19)胴節で成体になり、脱皮をしなくなります。大まかな分類と胴節数で成体かどうかわかる場合があります。幼体では雄の生殖肢が完成していないため、同定することが出来ません。


 エタノールにつけた状態のまま、第7胴節のみ取り外します。胴節は分類や同定ではあまり重要視されないため、多少壊れてしまっても問題はありません。生殖肢を傷つけないことを優先します。


 生殖肢の形態は分類群によって全く異なるため、上の画像だけを参考に別の種類で試してみると戸惑ってしまうかも、、、あくまで一例として見ていただけると良いです。



 腹面から見てみました。上が頭部側、下が尾部側です。やりやすい種類だと生殖肢だけスポッと抜くこともできるのですが、今回は難しそうだったので胴節を少し壊しました。その後、生殖肢(左)を上から下へ降ろして取り外しました。あまり力を入れすぎると壊れることがあるので、ここは慎重に行います。


 上手く取り外すことが出来ました。生殖肢の形態からアカヤスデ Nedyopus tambanus (Attems, 1901) と同定しました。アカヤスデ Nedyopus tambanus (Attems, 1901) には以下の3亜種が知られていますが、生殖肢の形態的差異は僅かです。

タンバアカヤスデ Nedyopus tambanus tambanus (Attems, 1901)
イカホアカヤスデ Nedyopus tambanus ikaonus (Attems, 1909)
ウマガエシアカヤスデ Nedyopus tambanus mangaesinus (Attems, 1909)

2022年02月12日追記:最近、別産地の標本を確認することでこれらの分類には大きな問題があることがわかりましたので、アカヤスデ属の一種Nedyopus sp.に訂正します。赤 (or 白) と黒の縞模様のものをアカヤスデ N. tambanus と同定されているのをたびたび見かけますが、ヤマトアカヤスデ Nedyopus patrioticus の間違いです。アカヤスデは赤と黒の縞模様になることはありません (しかし、わずかに白い帯が入る個体はいます)。

 属までの同定は「日本産土壌動物 第二版: 分類のための図解検索 」を使うとよいです。特徴的な種類でない場合、種類まで調べるためには自分で論文を集めて調べる必要があります。




関連リンク



2019年8月23日金曜日

ヤスデ類の文献集め

 筆者は1年ほど前からヤスデの文献を集めてきました。オンラインで入手できるものだけでもまだまだ終わりは見えないのですが、収集手段と重要な文献について軽くまとめておこうと思います。ヤスデ以外の分野でも使える部分は多いはず!日本産ヤスデ類の画像はこちら、入手済みの文献一覧はこちら、日本産ヤスデ類の高次分類のリストに関してはこちらをご覧ください。前半は文献収集全般、後半はヤスデ類(多足類)関連の文献について書いてあります。


 内容は2019年08月23日の執筆時点での情報です。2021年07月10日:東亜産多足類文献目録を追加。








主な入手場所


Google Scholar: まずはここで検索。


CiNii Articles - 日本の論文をさがす: 学術論文が対象です。

CiNii Research: 2022年4月1日より、CiNii ArticlesはCiNii Researchに統合されることになりました。両者の違いはこちらをご覧ください。


CiNii Books - 大学図書館の本をさがす: 図書や雑誌が対象です。


J-STAGE: 電子ジャーナルを入手できます。


国立国会図書館デジタル: 国立国会図書館がデジタル化した資料を閲覧可能です。


国立国会図書館オンライン(NDL ONLINE):インターネット上で見れない場合は、ここで複写依頼をすると良いと思います。大学に所属しないアマチュア研究者の味方。


Biodiversity Heritage Library: 生物多様性遺産図書館。古い文献はここから探します。ADVANCED SEARCHを使うといいです。Search Insideがとても便利で、ダウンロードして閲覧するよりBHL内で閲覧した方が楽です。


ResearchGate: 研究者用SNS。著者名で探すことが多いです。公開されていない場合は著者にリクエストを送ります。


各研究機関リポジトリ: 北海道大学のHUSCUP、筑波大学のつくばリポジトリ(Tulips-R)横浜国立大学学術情報リポジトリ京都大学学術情報リポジトリ鳥取大学研究成果リポジトリ琉球大学学術リポジトリ沖縄地域学リポジトリ:ORIONなどなど、、、
 リポジトリの数のわりにヤスデの文献は少ないです。その他のリポジトリは学術機関リポジトリ構築連携支援事業の機関リポジトリ一覧をご覧ください。一括で検索できると楽なのですが、そのような仕組みは無いようです。


図書館: CiNii Booksで雑誌名を検索するとどの図書館に何巻(何号)が所蔵しているかを確認できます。近くの図書館に所蔵していない場合は取り寄せることもできます。


博物館or博物館類似施設など: 頼めばコピーを取っていただける場合があります。図書館等で入手できない場合は発行元の施設に問い合わせてみるのもいいでしょう。









どのような文献があるのかを調べる


国立国会図書館サーチ: 主に国内の文献が対象です。


MilliBase: 世界のヤスデがどの文献の何ページに記載されているのか確認することができます。日本のヤスデに関しては若干情報が古かったり情報が無かったりすることもありますが、めちゃくちゃ有能です。


MyriaLit: CIM - Centre International de Myriapodologie (国際多足類学会)によるデータベースです。主に著者名と発行年で検索して使っています。


 ヤスデ以外の分類群にも似たようなものはあると思います。








重要な文献・書籍


田辺 力 (2001) 多足類読本:ムカデとヤスデの生物学. 東海大学出版会. ISBN978-4486015444
 多足類学への入りとして読みやすいです。学術的なことは主に後半に書いてあります。

篠原 圭三郎 (1974) 多足類の採集と観察. ニューサイエンス社.
 多足類読本と同じく入門として読みやすいです。多足類読本が多足類一般についての概説が多いのに対し、こちらは細かな種の解説が多め。

石川 良輔 (2008) バイオディバーシティ・シリーズ6 節足動物の多様性と系統. 裳華房. ISBN978-4-7853-5829-7
 多足類とは?ヤスデとは?という疑問に答えてくれます。多足類読本と共に最初に読むべき本。

内田 亨 (1966) 動物系統分類学 7 中B. 中山書店. ISBN978-4-521-07121-3
 ちょっと古いけれどこれも始めの方に読むべきです。多足類研究の歴史については上記2冊より詳しいです。


Minelli, A. (ed.) (2011) The Myriapoda. Volume 2. Treatise on Zoology - Anatomy, Taxonomy, Biology. Brill, Leiden and Boston, 482 pp. ISBN978-90-04-18827-3
 ヤスデの教科書。ヤスデ一般について広く書いてあります。


篠原 圭三郎・田辺 力・ Z. Korsós (2015) 節足動物門多足亜門ヤスデ綱 (倍脚綱). In: 青木 淳一 (編) 日本産土壌動物 第二版-分類のための図解検索. 721-723. 東海大学出版会, 秦野市. ISBN978-4-486-01945-9
 日本産ヤスデ類の属までの検索と解説があります。最初はこれで同定するといいです。


村上 好央 (1993) ヤスデ綱 (倍脚類)・ヤスデモドキ綱 (少脚類)・ムカデ綱 (唇脚類)・コムカデ綱 (結合類)). 日本産野生生物目録:本邦産野生動植物の種の現状 (無脊椎動物編 I)(環境庁自然保護局野生生物課編) pp. 95-106. 資源科学研究所, 東京. ISBN-13: 978-4-915959-07-3
 やや見落とされている種類や異名として統合されているはずの種類はありますが、当時記載されている日本産ヤスデ類のほぼ全種のリストです。日本のヤスデ類はこれを足掛かりに調べていくといいと思います。出版から26年経ち、一部分類群(ババヤスデ科等)に大きな変更があるので注意が必要です。


高桑 良興 (1954) 日本産倍足類総説. 日本学術振興会.
 三大入手困難文献その1。出版年は古いものの今となっても非常に重要な文献。ヤスデの概説に加え、当時までに記載されたヤスデ類の解説と13の新種が記載されています。2022/01/11追記 今思えば、CiNii Booksに登録されているので閲覧自体は容易でした。


三好 保徳 (1959) 日本の倍足類. 東亜蜘蛛学会.
 三大入手困難文献その2。筆者も未入手。見つけたら教えてください!
*2019/08/26追記 運よく本書を読む機会に恵まれました。日本産倍足類総説に並ぶ良書と言えます。ヤスデ類の形態の概説は日倍説、研究の歴史的背景は本書の方が詳しいです。著者の三好氏の観察に基づく考察が盛り込まれていて参考になります。日倍説の出版から5年経過していることもあり、掲載種数は増えています。2022/01/11追記 今思えば、CiNii Booksに登録されているので閲覧自体は容易でした。


芳賀 昭治 (1968) 日本のヤスデ. 自著出版.
 三大入手困難文献その3。13種1亜種が記載されています。本書以降再記載されていない種類も多く、本書を見なければ正体がわからないものが多いです。各種解説は日本語のみ。


東亜産多足類文献目録 Bibliography of the Myriapoda of east Asia
東アジアの多足類関連の文献のリストに加え、著者のコメントが掲載されています。掲載文献一覧はこちらをご覧ください。

高島 春雄 (1940) 東亞産多足類文獻目録 第1輯. Acta Arachnologica, 5(2): 148-152.
高島 春雄 (1940) 東亞産多足類文獻目録 第2輯. Acta Arachnologica, 5(4): 242-245.
高島 春雄 (1941) 東亞産多足類文獻目録 第3輯. Acta Arachnologica, 6(2): 60-67.
高島 春雄 (1942) 東亞産多足類文獻目録 第4輯. Acta Arachnologica, 7(2): 81-90.
高島 春雄 (1943) 東亞産多足類文獻目録 第5輯. Acta Arachnologica, 8(1-2): 39-42.
高島 春雄 (1944) 東亞産多足類文獻目録 第6輯. Acta Arachnologica, 9(1-2): 58-60.
高島 春雄 (1947) 東亞産多足類文獻目録 第7輯. Acta Arachnologica, 10(1-2): 53-55.
高島 春雄 (1949) 東亞産多足類文獻目録 第8輯. Acta Arachnologica, 11(1-2): 39-44.
高島 春雄 (1949) 東亞産多足類文獻目録 第9輯. Acta Arachnologica, 11(3-4): 93-95.
高島 春雄 (1950) 東亞産多足類文獻目録 第10輯. Acta Arachnologica, 12(1-2): 30-32.
高島 春雄 (1951) 東亞産多足類文獻目録 第11輯. Acta Arachnologica, 12(3-4): 95-97.
高島 春雄 (1952) 東亞産多足類文獻目録 第12輯. Acta Arachnologica, 13(1): 48-52.
高島 春雄 (1953) 東亞産多足類文獻目録 第13輯. Acta Arachnologica, 13(2): 85-96.
高島 春雄 (1954) 東亞産多足類文獻目録 第14輯. Acta Arachnologica, 13(3-4): 122-128.
高島 春雄 (1955) 東亞産多足類文献目録 第15輯. 山階鳥類研究所研究報告, 1(7): 306-309.
高島 春雄 (1958) 東亜産多足類文献目録 第16輯. 動物分類学会会務報告, 17: 6-10.
高島 春雄 (1959) 東亜産多足類文献目録 第17輯. 動物分類学会会務報告, 20: 7-10.
高島 春雄 (1960) 東亜産多足類文獻目録 第18輯. 動物分類学会会務報告, 23: 2-4.
高島 春雄 (1961) 東亜産多足類文献目録 第19輯. 動物分類学会会務報告, 26: 10-12.
篠原 圭三郎 (1963) 東亜産多足類文献目録・第20集. Atypus, (31): 35-38.
篠原 圭三郎 (1964) 東亜産多足類文献目録・第21集. Atypus, (33-34): 64-65.
篠原 圭三郎 (1965) 東亜産多足類文献目録・第22集. Atypus, (38): 25-26.
篠原 圭三郎 (1966) 東亜産多足類文献目録・第23集. Atypus, (41-42): 75-76.
篠原 圭三郎 (1968) 東亜産多足類文献目録 第24集. Atypus, (46-47): 61-63.
篠原 圭三郎 (1968) 東亜産多足類文献目録 第25集. 会務報告. Takakuwaia, (1): 5-6.
篠原 圭三郎 (1969) 東亜産多足類文献目録 第26集. 会務報告. Takakuwaia, (2): 1-3.
篠原 圭三郎 (1970) 東亜産多足類文献目録 第27集. Takakuwaia, (3): 4-6.
篠原 圭三郎 (1971) 東亜産多足類文献目録 第28集. Takakuwaia, (4): 5-7.
篠原 圭三郎 (1972) 東亜産多足類文献目録 第29集. Takakuwaia, (5): 6-7.
篠原 圭三郎 (1973) 東亜産多足類文献目録 第30集. Takakuwaia, (6): 6-8.
篠原 圭三郎 (1974) 東亜産多足類文献目録 第31集. Takakuwaia, (7): 5-7.
篠原 圭三郎 (1975) 東亜産多足類文献目録 第32集. Takakuwaia, (8): 5-6.
篠原 圭三郎 (1976) 東亜産多足類文献目録 第33集. Takakuwaia, (9): 5-6.
篠原 圭三郎 (1978) 東亜産多足類文献目録 第34集. Takakuwaia, (10): 6-8.
篠原 圭三郎 (1979) 東亜産多足類文献目録 第35集. Takakuwaia, (11): 7-9.
篠原 圭三郎 (1980) 東亜産多足類文献目録 第36集. Takakuwaia, (12): 7-8.
篠原 圭三郎 (1981) 東亜産多足類文献目録 第37集. Takakuwaia, (13): 7.
篠原 圭三郎 (1982) 東亜産多足類文献目録 第38集. Takakuwaia, (14): 5-7.
篠原 圭三郎 (1983) 東亜産多足類文献目録 第39集. Takakuwaia, (15): 6-8.
篠原 圭三郎 (1984) 東亜産多足類文献目録 第40集. Takakuwaia, (16): 8-9.
篠原 圭三郎 (1985) 東亜産多足類文献目録 第41集. Takakuwaia, (17): 6-7.
篠原 圭三郎 (1986) 東亜産多足類文献目録 第42集. Takakuwaia, (18): 6-8.
篠原 圭三郎 (1987) 東亜産多足類文献目録 第43集. Takakuwaia, (19): 5-7.
篠原 圭三郎 (1988) 東亜産多足類文献目録 第44集. Takakuwaia, (20): 14-15.
篠原 圭三郎 (1989) 東亜産多足類文献目録 第45集. Takakuwaia, (21): 10-11.
篠原 圭三郎 (1990) 東亜産多足類文献目録 第46集. Takakuwaia, (22): 7-8.
篠原 圭三郎 (1991) 東亜産多足類文献目録 第47集. Takakuwaia, (23): 10-11.
篠原 圭三郎 (1992) 東亜産多足類文献目録 第48集. Takakuwaia, (24): 99-101.
篠原 圭三郎 (1993) 東亜産多足類文献目録 第49集. Takakuwaia, (25): 19-21.
篠原 圭三郎 (1994) 東亜産多足類文献目録 第50集. Takakuwaia, (26): 13-14.
篠原 圭三郎 (1995) 東亜産多足類文献目録 第51集. Takakuwaia, (27): 9-11.
篠原 圭三郎 (1996) 東亜産多足類文献目録 第52集. Takakuwaia, (28): 41-43.
篠原 圭三郎・湊 宏・田邊 力 (1997) 東亜産多足類文献目録 第53集. Takakuwaia, (29): 29-31.
篠原 圭三郎 (1998) 東亜産多足類文献目録 第54集. Takakuwaia, (30): 14-16.
石井 清 (2001) 東亜産多足類文献目録 第55集. Takakuwaia, (31): 10-12.
石井 清 (2003) 東亜産多足類文献目録 第56集. Takakuwaia, (32): 8-11.





まとめ

 日本のヤスデ類はまだまだ研究途上で日本未記録種や未記載種もたくさんみつかります。また、ヤスデには地理的変異が多く見られますが、今まで地理的変異の研究はごくわずかで、タイプ産地以外から見つかっていないものも少なくありません。いつの日かこのページを読んだ人の中から同好の士が現れることを期待しています。